
vol.203 2025 AUTUMN
- [巻頭インタビュー]ドコモデータが拓く、Single ID Marketing「データ分断」という長年のマーケティング課題に終止符を。
- [NEWS PICK UP]総距離1700kmを超える組織の作り方
- [Z世代と言われましても]飲み会に関するホンネ編
- [D2C GROUP TOPICS]
D2C GROUP TOPICS
 
マーケティングプロセスにおける「データの分断」は、一貫した顧客理解を阻む構造的な課題でした。この課題に対し、私たちD2Cは世の中にドコモデータを活用した「Single ID Marketing」という新たな答えを提示します。これまで類推的に紐づけていたデータを1つのIDで繋ぎ、ユーザー理解を飛躍的に向上させるこの構想のもと、これまで積み上げてきた実績と経験を力に、この秋、社内の専門機能を集結させた新体制「Single ID Marketing本部(以下、SIM本部)」が始動しました。今回の表紙インタビューでは、SIM本部のメンバーの皆さんに、「Single ID Marketing」が実現するマーケティングの世界についてお話を伺いました。
国内唯一無二のデータが、マーケティングの常識を変える
―― おさらいとして、「Single ID Marketing」の素材となるドコモデータとは、どのようなものなのでしょうか?
伊藤:国内No.1キャリアであるドコモは、オンラインとオフラインを横断した、広範かつ精度の高いデータを保有しています。具体的には、キャリアならではの高精度な位置情報や正確な契約者情報を基盤に、1億以上の会員基盤を持つdポイントクラブの属性情報、d払いをはじめとする決済情報、さらにはdポイント加盟店様の購買(POS)データまで、様々なデータを企業のマーケティングに活用できる状態として保有しています。また、これらのデータはすべてお客様の同意に基づいて活用しており、プライバシーに最大限配慮しているのも特徴です。
―― 大手プラットフォーマーはもちろん、広告主も自社で多様なデータを保有していますが、それらのデータとドコモデータの違いは何でしょうか?
木下: 圧倒的な違いは、データの「種類」と「活用のしやすさ」です。膨大なデータを保有しているプラットフォーマーは他にもありますが、ドコモデータのように多種多様なデータが単一のIDで整理され、すぐにマーケティングへ活用できる状態にはなっていないのが現状です。例えば、決済データやアンケートデータなど、非常に優れたデータを保有する事業者は多くありますが、それらを横断して一つのIDで集計・分析までできるのは、国内ではドコモデータくらいじゃないでしょうか。
児玉:個別に集めたデータをマーケティングに活かそうとすると、どうしても「類推」でデータを繋ぎ合わせることになって、精度が落ちたりカバーしきれない領域が生まれたりします。決済データなどは確かに説得力がありますが、それだけでは顧客の一側面しか捉えることはできません。マーケティングで重要なのは、全体を「広く」見ることです。その点、「Single ID Marketing」では多面的なデータを一つのIDで正確に捉えられるため、ユーザーの全体像をよりクリアに描き出せるという点が最大のメリットです。
―― これまでもD2Cではドコモデータを取り扱ってきましたが、改めて、この「Single ID Marketing」とはどのような構想なのでしょうか?
江藤: これまでも私たちはドコモデータを活用してきましたが、「Single ID Marketing」は、そのポテンシャルをさらに解放し、マーケティングのあり方を根底から変えようとする、より大きな構想です。その核心にあるのが、マーケティングが長年抱えてきた「データ分断」という構造的な課題の解決です。
児玉: 少し具体的にご説明しますね。例えば、これまでの一般的なマーケティングでは、まずアンケートデータで「30代の健康志向の女性」というターゲットを定めます。次に、Web広告を出すために、プラットフォームが持つ閲覧履歴などから「おそらく、この人たちがターゲットだろう」と類推して広告を配信します。そして最後に、実店舗の購買データを見て、売上が伸びたかを確認する。このように、各段階で使っているデータが、すべてバラバラなんです。これでは、広告を見た人が本当に商品を買ってくれたのか、正確には分かりません。いわば、それぞれのデータを「類推的に」繋ぎ合わせていた状態でした。
「Single ID Marketing」は、この分断をなくします。一つのIDを軸に、認知から興味関心、購買、さらにはその後の利用状況まで、一連のマーケティングプロセスを地続きで見られるようにする。これが我々のめざす世界です。
清水:僕はオン・オフを統合したデータ分析を実現できるドコモのデータクリーンルーム「docomo data square」に携わっています。ここ数年で、複数のドコモデータを組み合わせて広告配信用にカスタムセグメントを作るデータ活用については、年間100社以上の企業様にご利用いただくほどに広がりました。これは、広告を「届ける」という部分での大きな成果を果たせていると思います。
一方で、顧客を深く「理解する」ための分析目的でデータを利用されるお客様は、その1割程度に留まっているのが現状です。これまでは「広告配信」と「分析」は別々のサービスとして捉えられがちで、「分析のためだけに追加コストを払うのは…」と躊躇されるケースが少なくありませんでした。「Single ID Marketing」構想では、これまでの“切り売り”の発想ではなく、分析から実行までを横断した一気通貫の価値としてご提案することで、ドコモデータ本来の活用方法を最大限に見出していけるものだと考えています。
木下:「広告配信」や「分析」に用いるIDは一つのIDで既に管理されていて、実際のデータを取り扱う環境も一つにまとまってきています。またそれらデータの特性を理解して取り扱えるデータサイエンティストも存在しています。「Single ID Marketing」構想ではそれらの強みを最大限活用して、一つのストーリーとして定義していくことで、広告主企業のパートナーとしてマーケティング課題の解決をしていくことができると考えています。
点在する“穴”を埋め、組織の強みを再定義する
―― この秋から、社内外に点在していたドコモデータに関わるチームが一つの本部となりました。これが「Single ID Marketing」構想の実現と加速にどのような風穴を開けるでしょうか?
伊藤: これまで各所に点在していたドコモデータ関連の機能が、一つの本部に集約されましたが、これは我々がドコモデータ関連の全てを抱え込むということでは全くありません。私たちの役割は、ドコモデータを活用したマーケティングのハブとなり、「頼れる専門家集団」となることが目的です。「ドコモデータのことなら、まずSIM本部に相談しよう」と、グループの皆が同じ方向を向くための“旗振り役”になりたい。決して我々だけで完結するのではなく、各部署が「ドコモデータ」に対して向き合った上で自部門の強みと私たちの専門性を掛け合わせることで、初めて構想が実現すると考えています。
児玉: 私のイメージは、「風穴を開ける」というより、すでに空いてしまっている「穴を埋めに行く」感覚に近いです。これまでは、ドコモデータが部署ごとに“部分最適”で活用され、会社全体として「Single ID」の思想が貫かれていませんでした。パーツは優れているのに、それぞれが繋がっていない「穴ぼこ」の状態だったんです。新本部の役割は、その穴を一つひとつ繋いで埋めていくこと。そして、戦略から実行までをドコモデータで貫くことで、「この会社こそが、ドコモデータを使いこなせる唯一無二のエージェンシーだ」と、社内外に示せるようにしたいです。
江藤: SIM本部が組織としてめざす姿も「Single ID Marketing」と同じ思想です。クライアントの課題・マーケティング活動において、これまで分断されていたものを繋ぎ、戦略から戦術まで、データをつないで一貫したストーリーを創り上げ解決すること。それが、この新体制がもたらす最大の変化であり、価値だと考えています。
「データ×クリエイティビティ」が生み出す新たな価値
―― 「Single ID Marketing」によって今までできなかった何が実現できるのか、もう少し具体的に伺えますか?
児玉:「Single ID Marketing」の世界で実現できることは主に2つあって、〈マーケティングの精度の向上〉と〈新たな潜在層へのアプローチ〉としています。新たに施策を実施する場合、今まではどういったユーザー層をターゲットとするのかユーザー層の設定から仮説を立てて戦略設計をしていました。もちろん、調査やターゲット分析、効果検証などさまざまな手法を経てユーザーを捉えるのが代理店の腕の見せどころでもあるのですが、「Single ID Marketing」構想では、ファクトに基づいたデータからユーザーを捉えられるので、ターゲット設定の段階でどういう訴求方法が適しているのかクリエイティブ戦略まで描けるのは大きな強みとなります。
具体的な実績でいうと、あるメーカーの例では、購買データとドコモのユーザーデータを掛け合わせることで、これまで認識されていなかった潜在的なターゲット層を発見することができました。さらに、そのターゲットに対してドコモデータを活用した広告配信を行うことで、購買リフトの向上を実証できています。
潜在層の発見だけでなく、効果改善でも一定の成果を得ています。Google広告とdocomo Ad Networkを相互補完的に活用することで、獲得数と獲得効率の双方とも最大化することに成功しましたし、アプリの利用促進においては、アクティブ率の高い見込みユーザーを発掘し、効果的なコミュニケーションプランを構築した事例もあります。
江藤:提案において0から全て探して100まで作っていたものが、「Single ID Marketing」の世界ではスタート地点が50になる。単にスタート地点が変わるだけでなく、信頼性や説得力が強化された土台がスタート地点になるのも大きな違いですし、そのアドバンテージの分だけ、機械化や自動化では生まれない「発想力」や「クリエイティビティ」に比重を置いて施策の質を上げることに注力していきたいです。
 
全社で創る、マーケティングの新時代
――約60名のSIM本部だけでなく、ドコモ出向メンバーも含め、「Single ID Marketing」構想の下、広くこのミッションに関わるメンバーに向けてのコメントをお願いします。
伊藤:「Single ID Marketing」への挑戦を、マーケティング全般の未来を作るターニングポイントにしたいです。変化の激しい業界において、常に挑戦し続けることは本当に根気のいることです。でも挑戦し続けることを諦めたくないですし、僕自身もこの領域の可能性を信じてこれまでの自身の経験とノウハウをフルコミットしていくので、D2Cの総力を上げて完遂したいと思っています。
江藤:「Single ID Marketing」の実現は、SIM本部だけで成し遂げられるものではありません。グループ全体を巻き込み、ともに未来を描いていきたい 。そのためには、各部署の協力が不可欠です。これまで培ってきたそれぞれの専門知識や経験と、「Single ID Marketing」という新たな武器を掛け合わせることで、これまでにない価値を生み出せると信じています。さらに、これまでバラバラだったものを1つに繋ぎ、会社としての強みを再定義する 取り組みは、SIM本部一部署のミッションに留まらず、グループ全体の未来を創るための重要な一歩と位置づけて推進していきたいと思います。
〈了〉
 
 
 
 
 
                                             
                                             
                                             
                                             
                                             
                                             
                                             
                                             
                                            

